日本で米国株投資している人にとって、避けては通れないリスクがあるとことをご存知ですか?
それは為替リスクです。
「S&P500 チャート」等とGoogleで検索して出てくるチャートは基本的にドル建てで、実際に円建てに換算するとドル建てとは異なる値動きをしています。
この値動きの差を為替リスクと言います。
為替リスクのメリット・デメリットをまとめると、
メリット
- 将来円安になると資産が大きく増える
- 今円高になると米国株を安く買い付けできる
デメリット
- 将来円高になると資産が大きく減る
- 今円安になると米国株の買い付け価格が高くなる
こちらは過去22年間のS&P500チャートをドル建て・円建てでの値動きを比較したものです。
為替リスクが米国株投資に与える影響は大きく、メリットデメリットありますが、この30年のチャートでは為替リスクは負に作用することが多いんです。
特にITバブル崩壊やリーマンショック級の歴史的大暴落に巻き込まれた場合、本国のアメリカ人以上に辛い思いをすることとなります。
上のグラフでも円建てのS&P500チャートはドル建てと比べ深く・長く暴落しており、トータルでも大きく劣後していることが分かりますね。
↓詳しくはこちらをご覧ください↓
日本で生活している以上、積立資産の売却であろうと株式からの配当であろうと、必ず日本円に変換する必要があるわけですが、この変換係数である「日本円の価値」がとっても厄介なんですね。
為替リスクの記事はよく見かけますが、米国株インデックスを実際に積み立てた場合、為替がリターンにどれくらい影響を及ぼすのかの検証記事は殆ど見かけません。
ということで、今回はS&P500の過去30年分のチャートを使用してドル建て・円建て(ドル円が変動しない場合)のリターン・リスクにどれくらい差が出るのか調べてみました。
この記事を読んで分かること
- ドル建て・円建てのシチュエーション別リターン・リスク比較
この記事を読んでほしい人
- これまで為替リスクを考えたことがない人
- 為替リスクを知りながらも、積立投資をするとどれくらい影響が出るのか知りたい方
今回のシミュレーションは、米国株インデックスS&P500に毎月1万円を
- 10年
- 20年
- 30年
積み立てた場合のそれぞれのリターンとリスクを算出しました。
シミュレーション結果を簡単に言うと
円建てはハイリスク
リターンは投資期間によって変わりますが、リスクに関しては10年、20年、30年いずれの場合も円建ての方がハイリスクという結果となりました。
S&P500に毎月1万円を積み立てた場合、為替変動がある(円建て)場合・ない場合(ドル建て)のリターンとリスクを比較する
- Yahoo!FinanceでダウンロードしたS&P500(米国株)チャートを使用
- チャート期間は1990年1月~2020年7月(厳密に言うと30年7ヵ月)
- ドル/円チャートはInvesting.comでダウンロードしたものを使用
- 分配金は税引き後1.8%を全額ファンド内再投資
- 手数料・税金・インフレなどは考慮しません
※簡易な計算なのでイメージとしてお楽しみください(^^)
目次:ジャンプできます
10年積立|円安により円建ての方が資産が増える
こちらは2010年1月~2020年7月13日までの期間、シミュレーション条件で積み立てた場合のグラフです。
リーマンショックが発生してから約2年後からのスタートです。
現在はコロナショックの影響で株価が下がっていますが、直近の10年間は皆さんがよくご存じの黄金期・最強米国株期間。
約10年で資産額は元本の約2倍と凄まじく成長しています。
2012年までは一時70円台と激しい円安となりますが、その後は最大125円台と約55円も円安が進むため、積立資産は一気に膨張します。
2020年7月時点では為替の影響あり(円建て)の方が為替の影響なし(ドル建て)をやっく12%も上回りました。
直近10年で限定すると為替リスクは米国株投資に対して良い方向で影響していることが分かりますね。
2010年からS&P500で積立すると
- 株価の急成長と円安が重なり円建てがドル建て以上に資産が伸びる
- 直近10年では為替リスクはプラスに作用する
20年積立|円高によりリーマンショックはかなり辛い
こちらは2000年1月からシミュレーション条件で積み立てた場合の資産額推移です。
2000年はITバブルの絶頂から暴落が始まる年です。
その後株価が戻るまで約7年かかりますが、その後すぐリーマンショックに巻き込まれるという非常に辛い時期からスタートします。
↓ITバブル崩壊について詳しくはこちら↓
積立額の少ない時期にITバブル崩壊を迎えるため、資産の減少は少ないですが、最初の5年間は全く資産が増えません。
その後少し増えたと思ったらすぐにリーマンショックに巻き込まれ、投資開始して9年後に元本割れするという、今米国株インデックス投資をしている方にとっては信じられないような展開となっています。
さらに、円建ての場合は激しい円高に苦しめられ、資産が回復するドル建てに比べ約4年間も辛い時期を過ごします。
円建ての資産が本格的に増え始めるのは、投資を開始して13年後です。
今は最強と言われている米国株インデックスも「タイミングによっては10年以上結果が出ないこともある」ということは知っておきましょう。
↓詳しくはこちら↓
2020年7月時点では資産額に大きな差が無いことから、為替の影響によってリスクが増大していることが分かりますね。
円建てS&P500のリーマンショックはかなりヤバい
こちらはリーマンショック時の最高値を100%とした場合の底値の比較グラフです。
ドル建て43.2%に対し、円建ては36.5%と凄まじく暴落しています。
つみたてNISAで人気のeMAXIS Slim S&P500や楽天VTIなどの米国株インデックス銘柄は全て円建てです。
証券会社で表示される評価額は既に為替リスクを加味したものになっていますのでご注意ください。
リーマンショック級の暴落が起きると、為替により凄まじく値を下げる可能性があることは知っておきましょう。
2000年からS&P500で積立すると
- 最初5年くらい資産が増えない
- 投資開始9年後にリーマンショックで元本割れする
- 円建ては長く苦しむ
- 2020年7月時点の資産額は殆ど差が無い
30年投資|こちらもリーマンショックはかなり辛い
こちらは1990年からやっく30年積み立てた場合のグラフです。
1990年は米ソ冷戦が終了した辺り、日本ではバブルが崩壊した年がスタートです。
プラザ合意により1985年から1995年辺りまで凄まじく円高が進むため、円建てはほとんど資産が増えません。
別件で1985年からのS&P500チャート見てたんですが、円建てS&P500だと1985年から10年間まったく増えてない笑
調べてみたら、1985年ばプラザ合意で先進国がドル安で協調することを決めた年で、日本経済バブルと重なって凄まじい円高になったみたい。
ちょっと面白い発見でした♪ pic.twitter.com/pITfX6D6eQ
— ナザール@未来は想像を超える (@investor_Nazal) April 16, 2020
その後、ITバブルの恩恵により一気に資産が増えますが、そこからは先の20年積立と同様です。
衝撃なのは積立開始から19年後、円建ては元本割れすることです。
今米国インデックスに投資している皆さん、投資開始19年後に元本割れするって想像できますか?
シミュレーションは簡易計算とはいえ、実際のチャートを使用していますからね!
30年のチャートでシミュレーションすると、リターンもリスクもドル建てが上回る、ということがわかりました。
1990年からS&P500に積立すると
- リターンは為替の影響なし(ドル建て)が優れる
- ほとんどの期間で円建てがドル建てに劣後する
- 20年と同様にリーマンショックは円建ての方がツラい
まとめ|長期で見るとリターンに大差はないがリスクは増大している
米国株(S&P500)に毎月1万円積み立てると
- 30年で見ると為替リスクが負に作用する
- 暴落時(リーマンショック)は円建ての方がツラい
- 直近10年は円建ての方が有利
今回シミュレーションしたそれぞれの期間のリターン・リスクを数値化してみました。
為替変動ありが円建て・為替変動なしがドル建てです。
年平均リターンに大差はありませんが、リスクに関しては円建ての方が明らかに高いことが分かります。
リターンは大差ないけどリスクは増大するので、投資の効率性を表すシャープレシオ(リターンをリスクで割った数値)はドル建ての方が上回っています。
↓リスク・シャープレシオについてよく分からない方はこちら↓
こちらはリターンを年別に比較したものです。
2013年はドル建てを20%以上も上回る一方、ITバブル崩壊時とリーマンショック時の底値ではドル建てよりも約10%も下回っています。
以上のことから、米国株インデックスを積み立てる場合
日本円は米国株のリスクを増大させる
ということがわかりました。
冒頭でも言いましたが、日本で生活している以上、積立資産の売却であろうと株式からの配当であろうと、利益を消費する前に必ず日本円に変換する必要があり、これから逃れることはできません。
安易な考えで「つみたてNISAなら米国株」や「流行っている米国高配当戦略」に手を出すと暴落時に心をへし折られる可能性があるので、リターンばかりに気を取られるのではなく、リスク管理もしっかり行いましょう。
今回のシミュレーション結果を基に、円建ての米国株投資が自分のリスク許容度の範囲内に収まっているか確認してみてはいかがでしょうか?
↓リスク許容度の測り方はこちら↓
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