これまで「現金比率50%ポートフォリオに債券を混ぜて投資効率を上げられないか」をテーマに米国債券TLT・BNDについて調べてきました。
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負えるリスクや狙うリターンは人それぞれなので、どっちがいいのかもその人次第ですが、特性から考えると
- 暴落の際はしっかりと防御したい
→BND - 暴落時の防御はそこそこにリターンも狙いたい
→TLT
のような選択となると思います。
だがしかし!!
今回 両者を比較できる約13年間シミュレーションしてみると、
S&P500と併用した場合は、BNDよりTLTの方がローリスクでハイリターン
という面白い結果が出たので共有したいと思います。
この記事を読んでわかること
- 米国債券TLT・BNDのリターンとリスク
- S&P500と米国債券TLT・BNDを併用した場合のリターンとリスク
この記事を読んでほしい人
- 米国債券に投資するか迷っている方
- 現在株式のみで運用している方
目次:ジャンプできます
単純比較するとTLTよりBNDの方がローリスク
こちらはドル建ての米国債券TLT・BNDのチャート比較です。
両者の違いは一目瞭然!
ある程度上下しながらぐんぐん伸びていくTLTに対し、安定してジワジワ増えるBND。
TLTはリーマンショック時に価格が大きく上昇していますが、±30%くらい上下動しているのでチャートを見る限りローリスクといえる銘柄ではありません。
対してBNDは価格変動はかなり小さく、キャピタルゲイン(債券価格上昇による利益)は見込めません。
ちなみに、過去10年の分配金は両者とも約3%(年)です。
まとめると
- ある程度リスクを負ってキャピタル・インカムで資産を増やすTLT
- 株価変動の盾として機能しながら分配金でリターンも拾うBND
とチャートからは読み取れますね。
ここまではドル建てチャートの分析です。
日本で生活する限りは日本円への変換が必要なので、ここに為替の影響を加えてみましょう。
円建ての米国債券TLT・BNDのチャート比較です。(薄い折れ線はドル建てです)
リーマンショック後の激しい円高により2007年から2015年あたりまで大きく凹んでいます。
円建てTLT・BNDチャートの年次騰落率とリスクをまとめてみました。
- BND:ローリスク・ローリターン
- TLT:ミドルリスク・ミドルリターン
が表れていますね。
今回のタイトルは「TLTの方が暴落に強い」としていますが、銘柄としてはTLTよりBNDの方がリスクは低いのです。
と思うかもしれませんが、これはチャートの騰落率なので分配金を含んでいません。
BNDは暴落時の盾の役割を担いながら分配金で資産を増やしていく銘柄です。
期間中に毎月一口ずつ積み立てて分配金を再投資するとバックテストでは30%も資産が増えたので、資産形成は十分可能です。
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S&P500と併用運用するとTLTの方がハイリターン
まずはシミュレーション条件です。
円建てのSPY(S&P500)米国債券TLT・BNDを毎月合計3万円積み立てる
- 計算期間はBNDが設定された2007年4月~2020年4月
- TLT・BND・SPYのチャートはYahoo!Financeでダウンロードしたものを使用
- ドル/円チャートはInvesting.comでダウンロードしたものを使用
- 計算の便宜上、毎月定額で購入・配当金も全額再投資できることとする
- 配当金は税引き後 TLT2.16、BND2.14%、SPY1.44%で計算
- 資産配分が+5%でノーセルリバランス
- 手数料・税金などは考慮しない
※簡易な計算なのでイメージとしてお楽しみください(^^)
こちらは結果のグラフです。
先ほど紹介したチャートの通り、BNDよりTLTの方が価格上昇が大きいので、予想通りTLTの方が資産は大きく増えますね。
TLTにリターンで劣るBNDですが、それでも元本と比べると大きく資産を増やしています。
意外なことに暴落時もTLTの方がローリスク
米国債券BNDは設定されて13年程度しか経っておらず、今回の積立シミュレーションは積立開始直後にリーマンショックに遭遇してしまいます。
このタイミングの暴落だと資産額が小さすぎて毎月の積立額の影響を大きく受けてしまうので、今回は積立シミュレーションとは別けてシミュレーションを実施しました。
暴落開始時に100万円投資していた場合、リーマンショックとコロナショックでどこまで資産が減少するのかを調査
- 積み立ては行わない
- どれかの資産比率が+5%でリバランス
- 配当金は全額再投資できることとする
(配当利回りは先ほどと同様) - 手数料・税金などは考慮しない
※簡易な計算なのでイメージとしてお楽しみください(^^)
シミュレーションの結果、
そう、なんと暴落時もTLTの方が防御力が高いんです!
暴落時の米国債券TLT・BNDの価格推移
こちらは、リーマンショック時及び今回のコロナショック時の円建てTLT・BNDのチャート比較です。
リスク(価格変動)はTLTの方が大きいものの、一番底での下落率が小さく、その後の回復も早いため、パフォーマンスでBNDを上回ったようです。
トータルでみてもTLTの方がローリスク・ハイリターン
ここまでの結果をまとめてみました。
資産比率別で比べると、すべての場合で米国債券TLTの方がローリスク・ハイリターンという結果になりました。
価格変動の大きい米国債券TLTですが、SPY(S&P500)と組み合わせることで、元々ローリスクなBNDよりもリスクを抑えリターンも得られるというのは面白い発見でした。
BNDがTLTより劣っているという意味ではありません。
「今回のシミュレーション期間ではTLTの方がS&P500との相性が良かった」というのが主旨です。
未来は不確定です。今後もTLTの方が相性が良いとも限りませんのでご注意ください。
ただし、金利が上昇するとTLTは大きく値を下げる
過去記事でも何度か紹介してきましたが、残念ながら米国債券にはもう伸びしろがあまり残っていません。
こちらは米国5・10・30年国債の金利推移です。
債券は金利が下がると価格が上がるという性質を持っていますが、1980年以降金利は下がり続けていて、下げ幅はもうあまり残ってないんです。
ここまでハイパフォーマンスだった米国債券TLTですが、今後は価格上昇はあまり期待できないかもしれません。
そして、米国債券TLTはデュレーションが長いため金利上昇時に大きく値が下がるという特性を持っています。
出展:氷河期ブログ
デュレーションは雑に説明すると、債券価格におけるテコの長さの様なものです。
これは金利が1%上昇した場合、単純計算でBNDが6.2%、TLTが19.07%下落することを意味します。
これを分配金で取り戻すには
- BND:約2年
- TLT:約7年
もかかってしまいます。
米国債券は伸びしろが少ない、特にデュレーションの長いTLTは大きく価格を下げる可能性があるということは知っておきましょう。
デュレーションと債券の価格変動については、私の尊敬する投資家ななしさんの記事が分かりやすいので、是非お読みください(^^)
まとめ|S&P500と一緒に運用するならTLTの方が相性が良い
- BNDはローリスク・ローリターンの安定した銘柄
- 対してTLTはミドルリスク・ミドルリターン
- S&P500と併用するとTLTの方がハイリターン
- S&P500と併用すると暴落時の防御力もTLT
- ただし、伸びしろは少ない
今回のシミュレーションでは、TLTはS&P500との相性が抜群であることが分かりました。
併用するとBNDよりローリスクであったことは大きな発見です。
TLTは調べれば調べるほど優秀な銘柄で、記事にする度に欲しくなってきています。
金利の下げ幅がないことが本当に惜しい・・・。
2番底専用の盾としてTLTはありかもしれない
米国債券は伸びしろがないと紹介してきましたが、現時点ではゼロではありません。
長期債の金利は1%を超えていて、あと1回分くらいは残っているのではないか?と個人的には思っています。
「過去40年間金利が下がり続けている」という事実を見ると、これからも金利が下がり限界ギリギリまでいくことは十分考えられます。
最後のひと絞りで金利が1%下がると、TLTは19%価格が上昇します。
長期投資としてはもう米国債券は苦しいですが、今のコロナショックに2番底があるならば、あと1回は優秀な盾として機能してくれるかもしれません。
世界のコロナウイルスの蔓延状況を見ると、2番底が来る可能性はゼロではないと思っているので、短期・中期間における盾として米国債券に投資するか検討してみたいと思います。
↓過去の暴落における2番底↓
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