当ブログでは米国株インデックス投資にかかる為替リスクについて何度も取り上げてきました。
為替リスクに対する過去記事の結論は
- 為替の影響は想像以上に大きい
- 過去20年でみると為替は負に作用する
- 積み立てでは為替によって投資リスクが増大する
ということで今回は、米国株インデックス投資における為替ヘッジのメリット・デメリットについて考えてみました。
この記事を読んでわかること
- 過去50年では為替は負に働いている
- 過去実績では為替ヘッジによってリスクを抑制できる
- ”為替ヘッジなし”の方が資産が増えることもある
この記事を読んでほしい人
- 為替リスク・為替ヘッジについてよく分からない方
- 為替ヘッジ付きにするか悩んでいる方
目次:ジャンプできます
為替ヘッジってなんだ?
まずは為替ヘッジがどんなものかよく知らない方のために簡単に説明します。
為替ヘッジとは
為替変動の影響を抑える仕組みのことです。為替ヘッジをすることにより、円高や円安の影響を抑えながら、海外の株式や債券に投資をすることができます。
出展:伊予銀行
こちらはリーマンショック時のS&P500チャートをドル建て・円建てで比べた表です。
毎日ドル・円の価格は上下しているので、ドル建てと円建てのチャートは動きが変わってきます。
簡単に言うと、為替ヘッジはドル・円による差を無くし、ドル建てチャートに近い動きをさせる仕組みのことを言います。
メリット|暴落+円高に強い
テレビ報道などで、相場の混乱により円高が起きると「リスク回避のため安全通貨である円が買われた」なんてよく耳にしますよね。
近年に発生した暴落は必ず円高がセットになっていて、日本投資家にとって更に資産が減るダブルパンチ状態となる場合が続いています。
↓暴落と円高の歴史について詳しくはこちら↓
このダブルパンチ状態は為替ヘッジのメリットが最大限活かされえるパターンなんです。
暴落+円高は、円建ての下落率を増大させ資産の回復を遅らせますが、為替ヘッジ付きのファンドだと円高によるダメージを軽減することができるんです。
デメリット|円安時はその恩恵を受けられない
円安が進むと円建て資産はドル建て以上のパフォーマンスを発揮しますが、為替ヘッジをしているとドル建てに近い値動きをするので、この恩恵を受けることができません。
デメリット|別途ヘッジコストがかかる
出展:野村アセットマネジメント
為替ヘッジは将来の為替を予約して行いますが、ドルの金利差分のコストが発生します。
こちらは約20年分のドルと円の金利差ですが、大暴落が発生すると金利差(ヘッジコスト)が大きくなる傾向があるようです。
見てみるとITバブル崩壊のあった2000年前後、リーマンショックがあった2007年前後で金利差がかなり大きくなって、最大で6%くらいありそうです。
これ、見方を変えると為替リスクをヘッジコストに変換しているとも見れますよね。
過去実績では”ヘッジあり”が有効の模様
こちらは過去50年のドル円の価格推移です。
実はドル円相場は戦後の固定相場から変動制に移行してまだ50年程しか経っておらず、1949年から1971年まで1ドル=360円で固定という今では信じられないレートでした。
そこから約50年かけて100円前後まで円高が進んでいます。
この為替チャートをS&P500のドル建てチャートに組み合わせると・・・
この50年で
- 円の価値:3.3倍
- ドル建てS&P500:32倍
- 円建てS&P500:9.6倍
伸び率が3倍以上も差が出てる・・。
米国株投資家の不都合な真実①
1枚目は米国株の投資家がイメージしている過去のS&P500のリターン。素晴らしい成績です。
そして2枚目は実際に投資家が得られたであろうリターン。円換算すると普通に日経平均に負けてます。なぜなら為替が円高になったから。 pic.twitter.com/ki7CubThhO
— 上原@外銀→投資家 (@uehara_sato4) February 15, 2020
ちなみ過去50年の円建てS&P500は日経平均といい勝負になります(;^_^A
50年の尺ではイメージが湧きにくいので、為替が今の水準に落ち着いた 直近の約20年、ITバブルのあたりから見てみましょう。
1998年~2020年
- 円の価値:1.18倍
- ドル建てS&P500:3.15倍
- 円建てS&P500:2.67倍
これだけ差があると、ヘッジコスト払ってでもヘッジかけた方がいいかも
ここまで紹介した通り、過去50年の実績で見ると為替リスクによってドル建てと円建てチャートには大きな差が生じており、為替ヘッジが機能するシチュエーションは多いと言えます。
この歴史がヘッジ付きファンドを誕生させた理由なんじゃないかと勝手に思っています。
積み立てると意外な結果に
僕も気になって、以前シミュレーションしたことがあるんです。
S&P500に毎月1万円を積み立てた場合、為替変動がある(円建て)場合・ない場合(ドル建て)のリターンとリスクを比較する
- Yahoo!FinanceでダウンロードしたS&P500(米国株)チャートを使用
- チャート期間は1990年1月~2020年7月(厳密に言うと30年7ヵ月)
- ドル/円チャートはInvesting.comでダウンロードしたものを使用
- 分配金は税引き後1.8%を全額ファンド内再投資
- 手数料・税金・インフレなどは考慮しません
※簡易な計算なのでイメージとしてお楽しみください(^^)
資産額はヘッジなしの方が増える場合がある
投資期間30年・20年・10年のリターン・リスクを数値化してみました。
為替変動ありが円建て・為替変動なしがドル建てです。
チャートでは大きく劣後する円建てですが、積み立ててみると10年・20年積み立てでは意外なことに”為替変動あり(円建て)”の方が資産額が増えるんです。
※あくまでも過去の実績であり、今後もヘッジなしの方が資産が増えるという意味ではありません。
ただし、リスクは増大している
こちらはリターンを年別に比較したものです。
2013年はドル建てを20%以上も上回る一方、ITバブル崩壊時とリーマンショック時の底値ではドル建てよりも約10%も下回っています。
米国株インデックスを積み立てる場合
為替はリスクを増大させる
↓詳しくはこちらをご覧ください↓
まとめ|為替ヘッジの目的は大きなリターンを狙うのではなくリスクの抑制
- 過去50年では為替は負に働いている
- 過去実績では為替ヘッジによってリスクを抑制できる
- ハイリスクな分”為替ヘッジなし”の方が資産が増えることもある
こう見るとリターンには大差ないものの、リスクは円建ての方が高くなっており、投資効率を表すシャープレシオはドル建ての方が優秀です。
ただ、リスクが高い分、円建ての方が資産が増えることもある。
悩ましいですね(;^_^A
ちなみに、僕は為替ヘッジありのファンドには投資をしていません。
その理由は、
- 将来「暴落+円高」の法則が崩れるかもしれない
- 現金をしっかり確保することで暴落へのリスク管理を行っている
- 為替リスクとヘッジコストどっちが有利なのかわからない
からです。
↓現金比率によるリスク管理はこちら↓
為替ヘッジあり・なしの選択に正解はなく投資する方によって答えは変わりますが、暴落時のリスクを抑制したいのなら為替ヘッジは有効な方法と言えます。
為替ヘッジのメリット・デメリットをしっかりと理解したうえで、為替リスクを受け入れるのか、ヘッジするのかを決めたいですね。
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