こちらは米国株インデックスS&P500のチャートです。
S&P500はこの10年で価格が3.4倍になっています。
最近は雑誌などでも多く取り上げられるようになり、世間は米国株投資のポジティブな情報で溢れていますね。
だがしかし!
日本で米国株投資している人にとって、避けては通れないリスクがあるとことをご存知ですか?
それは為替リスクです。
あなたはこれまで為替の影響を考えたことがありますか?
実はこのグラフ、ドル建てなんです。
日本で生活している以上、積立資産の売却であろうと株式からの配当であろうと、必ず日本円に変換する必要があるわけですが、この変換係数である「日本円の価値」がとっても厄介なんです。
ということで、今回は為替が米国株投資に与える影響を過去20年分のチャートを使用して調べてみました。
この記事を読んで分かること
- 過去20年では為替が米国資産に与える影響はかなりい大きい
- 過去20年では為替は資産に対し負に働くことが多い
- 暴落時は本国アメリカより辛い
この記事を読んでほしい人
- これまで為替リスクを考えたことがない人
- 為替がどれくらい資産に影響を与えるのか具体的に知りたい人
今回の調査期間を20年にした理由は、20年の間に米国株の絶好調と絶不調がどちらも含まれるからです。
直近10年の米国株はすさまじい右肩上がりでポジティブな要素しかありませんが、実は20年前からの10年間は長く低迷する米国株の暗黒期だったのです。
米国経済の良い時と悪い時、それぞれどういう形で為替が資産に影響を与えるのか気になりませんか?
↓米国株の暗黒時代について詳しくはこちら↓
先に結論を言っちゃうと、上のグラフのように為替が資産に与える影響は大きく、今回のシミュレーションでは日本円は米国株資産に対してかなりマイナスな働きをすることが分かりました。
ITバブル崩壊やリーマンショック級の歴史的大暴落に巻き込まれた場合、米国株投資をしている方は本国のアメリカ人以上に辛い思いをすることになるんです。
目次:ジャンプできます
円高は米国株資産をがっつり削る
こちらは約20年分のドル/円チャート(月次終値)です。
青い点線は期間中の平均値で108円です。
近似値線を引いてみると、この20年間は緩やかに円高が進んでおり、2007年から2014年に限っては激しく円高になってることがわかりますね。
こちらは期間中のドルの最高・平均・最低価格と変動比を現したものです。(月次終値を集計)
円相場が±30%変動するということは、資産の価値も±30%で変動するということを意味します。
もう何となく想像がつくと思いますが、為替が資産に与える影響はすさまじく大きいのです。
そしてグラフでは1998年から2012年にかけて約4割も円高が進んでいます。
先ほどの説明のとおり、円高が4割進むと日本円での資産価値が4割減ります。
そして、恐ろしいことにこの時期にリーマンショックが発生しているんです!
今回のシミュレーションでは暴落が発生する度に円高となるため資産がダブルパンチで減少するという日本人米国株投資家にとって踏んだり蹴ったりの結果でした。
それでは、過去20年を3つに分けてシミュレーションしてみましたので、このダブルパンチの詳細をご紹介します。
シミュレーション結果を紹介する前に条件の確認です。
- MacroTrendsで購入したS&P500(米国株)チャートを使用
- ドル/円チャートはInvesting.comでダウンロードしたものを使用
- 通貨が異なるためある定点を100%としてそこからの値動きを比較
- 配当・税金・インフレなどは考慮しません
※簡易な計算なのでイメージとしてお楽しみください(^^)
ITバブル期|バブルの恩恵を受けられず暴落する・・
こちらはITバブルから崩壊期・回復期のドル・円換算S&P500をグラフにしたものです。
90年代後半から2000年にかけてハイテク株が実際の価値以上に暴騰し、米国経済はITバブルに沸いていました。
しかし、バブルと激しい円高が同時期に発生したため円換算S&P500だとバブルどころか資産価値は右肩下がりとなっています。
そしてバブル崩壊。
一旦は円安となりましたが、S&P500の回復期に再び円高となり円換算S&P500はドル換算と比べ資産の回復が鈍くなっています。
ここぞのタイミングで円高となったため、バブル絶頂の恩恵も受けられず暴落後は回復も遅いという結果で、円換算S&P500は該当期間中は平均で10.3%下回って価格推移しています。
ITバブル期の為替の影響
- バブル絶頂期と円高が重なり恩恵を受けられない
- 回復期と円高が重なり資産の回復が遅い
- 円換算S&P500は平均すると10.3%下回って価格推移する
リーマンショック|米国よりも深く・長く暴落する
こちらは100年に1度の大暴落と言われたリーマンショックから回復期・現在までのドル・円換算S&P500をグラフにしたものです。
ITバブル崩壊から7年後、やっと株価が戻ったと思ったら今度は100年に1度の大暴落と米国株にとって長く低迷した時期でもあります。
グラフを見てみると、暴落と同時に円高が始まったため、ドルと比べ約10%も余分に暴落しています。
円換算S&P500のリーマンショック時の暴落率は驚愕の60%です。
さらに回復期になっても円高は進み、約4年間も底値付近で資産価値が推移することとなり、元の価格に戻るまで1年も余分にかかります。
該当期間中は平均で18.2%も下回って価格推移し、最終価格も1割以上低い結果となりました。
リーマンショックの為替の影響
- 円高によりドルより深く暴落する
- 回復期と円高が重なり資産の回復が遅い
- 暴落付近の価格で約4年も低迷する
- 円換算S&P500は平均すると18.2%下回って価格推移する
黄金期|円安の恩恵を受け米国より1割増しのリターン
こちらはリーマンショックの底値から現在までのドル・円換算S&P500をグラフにしたものです。
直近の10年間は皆さんがよくご存じの黄金期・最強米国株期間です。
ここまで踏んだり蹴ったりの内容でしたが、この10年間に限っては株価の急成長と円安が重なりドル換算を約1割上回る実績です。
円安が進んでいた期間に米国株投資を始めた方は本国よりも大きなリターンを得られているハズです。
該当期間中は平均で16.3%も上回って価格推移し、最終価格も1割以上高い結果となりました。
米国株黄金期の為替の影響
- 株価の急成長と円安が重なりドル換算以上に資産が伸びる
- 円換算S&P500は平均すると16.3%上回って価格推移する
まとめ|過去20年では円と米国株投資は相性が悪い
- 日本円は20年で±30%も変動している
- 円高が30%進むと資産価値は30%下がる
- 配当金も同様に目減りする
- ITバブルでは円高で恩恵受けれず、暴落後も円高で回復遅い
- リーマンショックはドル以上に暴落し円高で回復遅い
- 黄金期に限っては円安と株価成長が重なり本国を上回る
今回のシミュレーションの結果、ここぞの局面で円高が作用し資産がドル換算より増えない・下がるという現象が多く見られました。
直近10年の黄金期ではプラスに作用していますが、ITバブルの上昇期では円高ですし、ここ数年も円高が進んでいるため、必ずしもプラスに作用するかは分かりません。
このように為替は日本国内での米国株投資にはマイナスに働くことが多く相性が悪いということが言えます。
また、歴史的大暴落が発生した場合、円換算だと資産の回復が遅く、本国の米国よりも辛い思いをする可能性が高いということも頭に入れておきましょう。
暴落はあなたが思うよりずっと過酷です。
今回紹介した通り、リーマンショック時は60%も暴落し(ドルは約50%)、その後もほとんど価格が戻ることなく4年経過しました。
具体的に言うと、自分の資産1,000万円が400万円まで暴落し、その後4年経っても価格がほとんど戻らないということが発生します。
あなたは
- 6割引きの底値が4年が続いても耐えられますか?
- 自分を信じて積み立て続けることができますか?
- 30%円高が進むと、配当だって30%目減りしますよ
日本で生活している以上、積立資産の売却であろうと株式からの配当であろうと、利益を消費する前に必ず日本円に変換する必要がり、これから逃れることはできません。
安易な考えで「つみたてNISAなら米国株」や「流行っている米国高配当戦略」に手を出すと暴落時に心をへし折られる可能性があるのでリスク管理はしっかりと行いましょう。
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