日本で米国株投資している人にとって、避けては通れないリスクがあるとことをご存知ですか?
それは為替リスクです。
ブログなどでよく見るS&P500のチャートはドル建てのものが多く、実際に円建てに換算した時は、下のグラフのようにドル建てとは異なる値動きをしていて、この値動きの差を為替リスクと言います。
「S&P500 チャート」等とGoogleで検索して出てくるチャートは基本的にドル建てで、円建ての値動きとは違うので要注意です。

こちらは過去22年間のS&P500チャートをドル建て・円建てでの値動きを比較したものです。
以前の記事では、この為替リスクが米国株投資に与える影響は大きく、ITバブル崩壊やリーマンショック級の歴史的大暴落に巻き込まれた場合、本国のアメリカ人以上に辛い思いをすると解説しました。
上のグラフでも円建てのS&P500チャートはドル建てと比べ深く・長く暴落しており、トータルでも大きく劣後していることが分かりますね。
↓詳しくはこちらをご覧ください↓

日本で生活している以上、積立資産の売却であろうと株式からの配当であろうと、必ず日本円に変換する必要があるわけですが、この変換係数である「日本円の価値」がとっても厄介なんですね。
ここまでを知ると、eMAXIS Slim S&P500や楽天VTIなど米国株インデックスで積立している方は、為替がリターンにどれくらい影響を及ぼすのか気になりますよね。
ということで、今回はS&P500の過去20年分のチャートを使用してドル建て・円建てのリターン・リスクにどれくらい差が出るのか調べてみましたのですが、予想に反して驚愕の結果が算出されのでご紹介します。
この記事を読んで分かること
- 米国株は日本円に換算するとドル建てよりハイリスク・ハイリターンとなる
- ドル建て・円建てのシチュエーション別リターン・リスク比較
- 円建ての暴落時はドル建てより深く長く低迷する
この記事を読んでほしい人
- これまで為替リスクを考えたことがない人
- 為替がどれくらい資産に影響を与えるのか具体的に知りたい人
今回のシミュレーションは、前記事と同様に調査期間を20年にしています。
その理由は、20年の間に米国株の絶好調と絶不調がどちらも含まれるため、いろんなシチュエーションでシミュレーションをすることができるからです。
↓米国株の絶不調時代について詳しくはこちら↓

先に結論を言いますと、今回のシミュレーションでは円建てチャートはドル建てチャートよりも深く・長く低迷するが、定額積立で運用するとドルコスト平均法の威力を発揮しドル建てよりも大きなリターンを得るという結果になりました。
超簡単に言うと
円建てはハイリスク・ハイリターン
ということです。
それでは、米国株(S&P500)過去20年チャートで「ITバブル期」「リーマンショック期」「黄金期」の3つのシチュエーションに別け、それぞれの時期から積み立てを開始した場合のリターンとリスクをご紹介します。
その前に、いつものシミュレーション条件です。
S&P500のドル建て・円建て、それぞれのチャートに毎月1万円を積み立てた場合のリターンとリスクを比較する
- MacroTrendsで購入したS&P500(米国株)チャートを使用
- ドル/円チャートはInvesting.comでダウンロードしたものを使用
- 手数料・配当・税金・インフレなどは考慮しません
※簡易な計算なのでイメージとしてお楽しみください(^^)
目次:ジャンプできます
ITバブル期|ほとんどの期間でドル建てに劣後する

こちらはITバブル崩壊前から1万円積み立てた場合のドル建て・円建ての資産額推移です。
90年代後半から2000年にかけてハイテク株が実際の価値以上に暴騰し、米国経済はITバブルに沸いていました。
しかし、バブルと激しい円高が同時期に発生したため、資産を太らせるバブル期でも資産額はドル建てより劣後して推移します。
そしてバブル崩壊。
一旦は円安となりましたが、回復期に再び円高となり比べ資産の回復が鈍く、長期間大きな含み損を抱えることになります。
長い低迷期に積み立てられたことで最後にかろうじて資産額が逆転しますが、ここぞのタイミングで円高となったため、バブル絶頂の恩恵も受けられず暴落後は回復も遅いという結果となり、ほとんどの期間をドル建てより辛い時間を過ごす羽目になります。
ITバブル期に円建てで積み立てると
- バブル絶頂期と円高が重なり恩恵を受けられない
- 回復期と円高が重なり資産の回復が遅れ長く低迷する
- 長い低迷期間に積み立てるため、最後にドル建てを少しだけ上回る
最終的に円建てがドル建てを上回りましたが、この後1年もせずリーマンショックに巻き込まれることになります。
リーマンショック|円安の影響で後半一気に伸びる

こちらは100年に1度の大暴落と言われたリーマンショックから1万円積み立てた場合のドル建て・円建ての資産額推移です。
積立額の少ない時期にリーマンショックを迎えているので、グラフでは少々分かり難いですが、円高と重なった影響で円建て株価はドル建てよりも10%高い60%も暴落しました。
その後もしばらくはドル建てよりも劣後して推移します。
しかし、積立開始から5年後に急速に円安が進むお陰で低迷期に積み立てた資産が一気に膨張、ドル建てのリターンを大きく引き離します。
2019年9月まで積み立てを続けた場合、ドル建てを約12%も上回るパフォーマンスとなりました。
リーマンショック期に円建てで積み立てると
- 円高によりドル建てより深く暴落する
- 回復期と円高が重なり資産の回復が遅い
- 長い低迷期に積み立てた資産が急速な円安で一気に爆発する
- 最終的にはドル建てを約12%上回るパフォーマンス
黄金期|こちらも円安の恩恵でドル建てを上回る

リーマンショック後からの10年間。S&P500の黄金期から1万円積み立てた場合のドル建て・円建ての資産額推移です。
直近の10年間は皆さんがよくご存じの黄金期・最強米国株期間です。
最初の3年はドル建てより劣後しますが、その後は円安の影響で資産が膨張し、2019年9月時点でドル建てを約14%上回ります。
直近10年で限定すると為替リスクは米国株投資に対して良い方向で影響していることが分かりました。
米国株黄金期に円建てで積み立てると
- 株価の急成長と円安が重なりドル建て以上に資産が伸びる
- 直近10年では為替リスクはプラスに作用する
まとめ|円建てのリターンは大きいが辛い時期の方が圧倒的に長い

米国株(S&P500)に円建てで積み立てると
- 暴落と円高が同時に来るため、暴落時はより深く下落する
- 回復期も円高が続くため長く低迷する
- 長い低迷期間に積み立てるため、後半は円安も手伝い一気に資産が増える
なんて思っていると痛い目に遭うので要注意です。
確かに、結果的に円建ての方がリターンは良かったですが、暴落時はより深く下落し、低迷期間もドル建てに比べ圧倒的に長いんです。
特に、回復期の円高は資産の回復を大きく妨げ、投資のモチベーションを奪っていく可能性があります。
そして大事なのは、今回のシミュレーションでは円建ての方が良かっただけで、今後も円建ての方がリターンが大きくなる保証はない、ということは頭に入れておきましょう。
円建て米国株投資はハイリスク・ハイリターン

今回シミュレーションしたそれぞれの期間のリターン・リスクを数値化してみました。
リターンは全ての期間で円建てがドル建てを上回っていますが、リスクもドル建てを大きく上回っていることが分かります。
そして、投資の効率性を表すシャープレシオ(リターンをリスクで割った数値)はドル建ての方が上回っています。
これは円建てが上回っているリターン以上にリスクが高いことを意味します。
↓リスク・シャープレシオについてよく分からない方はこちら↓



こちらはリターンを年別に比較したものです。
2013年はドル建てを20%近く上回る一方、ITバブル崩壊時とリーマンショック時の底値ではドル建てよりも約10%も下回っています。
以上のことから
日本円は米国株をハイリスク・ハイリターンに変貌させる
ということがわかりました。
冒頭でも言いましたが、日本で生活している以上、積立資産の売却であろうと株式からの配当であろうと、利益を消費する前に必ず日本円に変換する必要があり、これから逃れることはできません。
安易な考えで「つみたてNISAなら米国株」や「流行っている米国高配当戦略」に手を出すと暴落時に心をへし折られる可能性があるので、リターンばかりに気を取られるのではなく、リスク管理もしっかり行いましょう。
今回のシミュレーション結果を基に、円建ての米国株投資が自分のリスク許容度の範囲内に収まっているか確認してみてはいかがでしょうか?
↓リスク許容度の測り方はこちら↓

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